第139章 いつも通り

「パパ」

小林父は感情を表に出さないほうだ。それでもこの瞬間ばかりは堪えきれず、目元が赤く滲んだ。

「いい子だ」

その横で小林圭吾は落ち着かない様子で待ち構え、視線を水野佑奈の動きに貼りつけたまま離さない。――次は自分だ。あの一声を聞き逃すわけにはいかない。

水野佑奈は一目でその思惑を見抜くと、わざと意地悪く、なかなか圭吾のほうを見ない。

小林圭吾が痺れを切らして口を開きかけた、そのとき。

水野佑奈はふいに振り返り、砂糖みたいに甘い声で呼んだ。

「お兄ちゃん」

「……っ、あぁ——!」

小林圭吾は返事をしながら、胸の奥が熱くなっていくのを抑えられなかった。

その日のうちに小...

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